このページは,情報工学科内の学生および他大学から当研究室を希望する学生への研究紹介に主眼をおいて作成しています.平易に解説するため,学術的にはやや不正確な記述があろうかと思います.ご了承願います.

* アレーアンテナを用いた高分解能到来方向推定および,その関連テーマ [#g755b0f7]
車載レーダなど各種のレーダによる目的物体(ターゲット)の位置推定技術が実用化されていますが,まだまだ身近な機器に応用されるには至っていません.身近な携帯端末,あるいは無線LANのアクセスポイント,携帯電話の基地局などの様々なシステムにおいて,周囲の無線機器や到来してくる電波の情報(特に方向)を知ることにより,位置・方向情報を利用した様々なサービス,あるいは周囲の電波環境に応じた自立的・協調的なシステム運用が可能となります.

電波(無線)の方向を推定するには,人間の目と同様に空間的に離れた複数のアンテナを配置することにより実現できます.このようなアンテナをアレーアンテナと言います.人間の両眼でターゲットの方向や距離を推定した際に,ある限界があるように,アレーアンテナにおいても古典的な手法に基づく手法では,その分解能・精度には限界がありました.しかしながら,電波の世界では(人間の目では利用されていない)波の位相を活用することができます.近年,その性質を最大限に利用して,古典的な手法の分解能特性を越えた位置推定・方向推定が可能となってきています.このような一連の手法をスーパーレゾリューション(超解像)法と言います

本研究室では,スーパーレゾリューション法の様々な分野への応用,実用化を目指して,新たなアルゴリズムの開発を含めた,多次元化,高速化に関する研究を行っています.


* MIMO通信の大容量化・ブラインド処理化に関する研究 [#w3403216]
有線通信の場合1本の光ファイバで伝送するより,2本,3本と増やして,それぞれで異なるデータを送れば2倍,3倍の情報を送ることができることは容易に予想できます.さて,無線通信の場合はどうでしょう? 電波は光ファイバのように決まった経路を辿らず,四方八方に広がり,反射・回折・散乱などの影響を受けながら伝搬します.送信・受信のアンテナを,それぞれ2本,3本と増やしたところで,混信してしまいますので,単純にはうまくいきそうにありません.

それを可能にしたのがMIMO(Multiple Input Multiple Output)伝送技術です.最近では,ほとんどのノートPCの無線LAN(IEEE 802.11n)でも利用されています.本研究室では2000年初頭より,アンテナシステムを最適化することにより,伝送容量をどのように改善できるかを検討し,最近ではICA(独立成分分析)という信号処理手法を活用したブラインド伝送方式など,MIMO伝送システムに関する研究を行っています.

* MIMOセンサによるセキュリティ技術/屋内人物の位置・モーションセンシングに関する研究 [#cc50e9c6]
屋内における無線機器を利用しているユーザの位置情報が分かれば,セキュリティは言うまでもなく,多様なサービスの提供に有効といえます.ただし,屋内では,目には見えませんが壁や床,天井,様々な家具などの反射等により,電波の伝搬の様子は非常に複雑になるので,そのような位置推定手法の実現は屋外に比べ非常に難しくなります.先に示したMIMOは,実は,このような複雑な伝搬(マルチパス伝搬と言います)の時に,性能を最大限に発揮する技術です.当研究室では,このMIMOにおける概念を利用したマルチパス伝搬環境でのユーザ端末位置推定手法の開発を行っています.マルチパス伝搬MIMOセンサとして
* ミリ波MIMOレーダによるセキュリティ技術/屋内人物の位置・モーションセンシングに関する研究 [#cc50e9c6]
人物に位置や動作を認識することは,セキュリティシステムへの応用ばなりでなく,万マシンインターフェースなど様々な応用が期待できます.もちろんカメラを利用すれば,同様のサービスを実現できますが,プライバシーの観点では好ましくない場合も想定されます.そのような際に高機能なセンシングを実現するため,本研究室ではミリ波レーダを用いた高機能なセンシングシステムを開発しています.

また,複雑なマルチパス伝搬をしている屋内環境は,すなわち,電波の網が張り巡らされた部屋のような物です.これを利用すれば,侵入者監視センサが実現できます.これがMIMOセンサです.電波は反射を繰り返し,見通し不可能な領域にも入り込むことができ,かつ木材などは透過するので,赤外線センサ等では実現できない性能を発揮します.このようなMIMOセンサに関しても,研究を進めています.
すでに複数の人物を同時にトラッキングするシステムを開発済みで,今後は機械学習などを導入し,観測される信号の特徴を利用した動作認識,ターゲット識別システムへの発展を目指しています.

* マイクロ波リモートセンシングに関する研究 [#z9143d70]
上記に示した様々なアレー信号処理技術は,SAR(合成開口レーダ)画像とよばれるマイクロ波リモートセンシング画像処理にも活用できます.本研究室では,米国NASAジェット推進研究所,ドイツDLRや日本のJAXAの研究者と交流しており,様々なSAR画像データが利用できます.特にJAXAが 打ち上げた陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)に関しては,様々なシーンや時刻,異なる偏波などを揃えており,これらから光学センサでは観測困難な新たな情報を取り出す画像処理手法の研究に取り組んでいます.

特に力を入れているテーマは,地球温暖化に密接に関連する森林観測で,森林の高さやバイオマス量,森林破壊のモニタ手法などです.

* 主要な解析手法について(作成中) [#uc20bb92]
-Superresolution(超解像)到来方向推定
-MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)技術
-STAP(時空間適応信号処理: Space-Time Adaptive Processing)
-ICA(独立成分分析: Independent Component Analysis)
-SAR(合成開口レーダ: Synthetic Aperture Radar)